会社の倒産(事業再生・破産)は弁護士へ!相談から申立、手続完了までの流れ

社長と弁護士

会社の倒産は弁護士に相談することから

早期相談を心掛ける

会社の経営状態が悪化してしまい「倒産」という選択肢も出ているような場合、どのように対処するのがベストでしょうか。状況に応じて対策は変わってきますし、何が正解なのか導き出すことは難しいかと思います。
ただ資金繰りが苦しくなってきたとしても無理な金策をしてはいけません。一時的に資金を得て金融機関への返済に回せたとしてもその後の状況は悪化するだけで、最終的には経営者個人や従業員、その家族にも迷惑をかけてしまいます。

そこで倒産という手段も視野に入れつつ、専門家である弁護士に相談することが大切になってきます。倒産と言ってもその処理方法にはいくつかありますし、弁護士のアドバイスを得ることで会社を再生することもできるかもしれません。再生ができないにしても適切に破産手続を行うことで多くの利害関係者に負担を強いることなく廃業をできます。

いずれにしろ、倒産を考えはじめた段階で、早期に弁護士へ相談することが重要です。

会社の倒産にも費用が必要

会社の規模や債務に応じて数十万円から数百万円以上が必要なケースも

倒産する際に、弁護士への早期相談が重要とされる理由の一つが費用の問題です。

倒産するにしても費用がかかるということをご存知でしょうか。その金額も決して小さなものではなく、会社や債務などの規模に応じて変わり、最低でも数十万円は必要です。場合によっては数百万円以上を要することもあります。会社の再生を図る手続でも同様です。

さまざまな需要に合わせて倒産手続の整備も進んでいますので、簡易かつ少額で手続を進められるケースもありますが、どの手続にするか検討をするにも弁護士のサポートは欠かせません。費用を確保するための手法についてもアドバイスを得られますので早期相談をするように心がけましょう。

倒産方針はどのように決定するのか

弁護士が会社経営者から倒産の相談を受けた場合、倒産の方針はどのように決定していくのでしょうか。
倒産方針を検討する場合の一般的な流れは下記の通りです。

  1. 自主再建の検討
  2. 法的再建の検討
  3. 清算の検討

自主再建の検討

倒産手続を進める前に、基本的には自主再建を検討することから始めます。
破産という手段を避け、裁判所の介入もできるだけ避けることで迅速かつ柔軟な再建を実現できるためです。費用も比較的少なくて済むでしょう。

この検討にあたっては、会社の利益を増やすための改善余地があるかどうか、利息の返済が可能かどうかといった点に着目します。

法的再建の検討

自主再建が難しいとみられる場合には法的再建を検討していきます。これには「民事再生手続」のほか「会社更生手続」、「任意整理」などの手段があります。

民事再生手続とは、債務者である会社に一定財産の保有を認めた上で債務の圧縮を図る裁判上の手続です。多数債権者の同意と、裁判所の許可を受けた再生計画を定めることが必要とされます。
裁判所から選任された監督委員が手続の監督を行いますが、実際に進行を務めるのは債務者自身です。経営陣を入れ替える必要がないことや、通常の破産手続より要件が緩和されているなど、比較的利用のしやすい倒産手続と言えます。

この民事再生手続を含む法的再建を検討するにあたっては、借入金の元利返済の猶予を得た場合やリストラなどの方法によって黒字になる見込みがあるかどうか、取引先との継続ができそうか、当面の人件費や運転資金の確保が可能かどうか、といった点に着目します。また当然、経営者や従業員が再建に対して意欲的かどうかも重要なポイントです。

清算の検討

再建の見込みがないと判断された場合には清算、つまり破産を検討することになります。
会社清算には、他の多くの手続のベースとなっている「破産手続」から「特別清算手続」、「任意整理」などがあります。

破産手続とは、裁判所監督のもと、裁判所に選任された破産管財人が会社財産の清算を行う手続です。厳格かつ強力な手続で、債権者が協力的かどうかを問わず強制的に進めていくことができます。
特別清算手続は通常の破産手続に則った手続であるものの、比較的迅速な処理ができるようになります。株式会社かつ多くの債権者の同意が得られる場合にはこの手続も検討します。

弁護士と民事再生手続を進める場合の流れ

再生の見込みがある場合には再建型の倒産手続が採用されます。以下で民事再生手続について大まかな流れを説明していきます。

  1. 申立て準備
  2. 民事再生の申立
  3. 裁判所による保全命令・監督命令
  4. 債権者集会
  5. 再生計画の認可
  6. 手続の終結

申立て準備

会社代表者等は弁護士と相談しながら、まずは民事再生手続申立のための準備をしていきます。必要書類を用意しつつ弁護士から事情聴取を受けます。
必要書類には過去の資金繰り表や申立て後の資金繰り表、そして今後の事業計画などがあります。

弁護士は現在の状況を把握しながら申立書を作成し証拠書類等の整理をします。実務上、民事再生手続では申立の前に裁判所に事前相談をするということもよく行われます。
その際には、申立書に不備がないか確認してもらい、スムーズに受理できるようにしておきます。またこのときに費用のうち大きな割合を占める「予納金」についても知ることができます。

民事再生の申立

申立書の受理後、裁判所は保全処分を出すことがありますが、その前に債務者尋問が行われます。そこでは会社が民事再生手続を要するに至った経緯や再生計画の内容などを尋問されます。詳しく説明できる必要があるため、その場には会社代表者のほか、弁護士や業務および経理を担当している従業員も出席する可能性があります。

裁判所による保全命令・監督命令

申立をしてから開始決定を受けるまでにはタイムラグが生じますので、再生手続の申立と同時に保全処分の申立も行うのが一般的です。
裁判所による保全処分がなされると、債務者は財産の処分が禁止されるとともに自己の債務の支払をしなくてもよくなります。

また、民事再生手続では監督委員と呼ばれる者が選任されます。監督委員は手続の要件を満たすかどうか調査、再生計画に対する意見を裁判所に出すことや会社の監督等の職務を行います。
多くは保全処分が出されると同時に監督命令も出され、その職務執行のため債務者は監督委員と打ち合わせを行うことになります。

債権者集会

民事再生手続開始決定を受けてからしばらくして債権者集会が開催されます。ここで再生計画案について可決を得る必要があります。そのためには出席した議決権者の過半数の同意かつ議決権の総額の2分の1以上の議決権を持つ者が同意することが求められます。ここでの議決権は債権額とほぼ同じと考えます。

再生計画の認可

再生計画が可決された場合、次に裁判所が認可決定の判断を行います。その判断においては所定の不認可事由に該当しないかどうかがチェックされます。
認可決定を経てから、何事もなく不服申立期間を経過すれば再生計画が無事確定となります。
ただしこの時点ではあくまで計画が認められたにすぎず、債務者はそこから計画に沿った事業を遂行していかなければなりません。これが履行できない場合には計画内容の変更について債権者の同意得るか、もう一度民事再生手続の申立から行わなければならなくなります。

手続の終結

再生計画を履行し終えることで手続の終結決定がなされます。

弁護士と破産手続を進める場合の流れ

再生の見込みがなければ清算手続へと進むことになります。以下で破産手続について大まかな流れを説明していきます。

  1. 申立て準備
  2. 破産申立
  3. 破産開始決定と破産管財人選任
  4. 債権者集会
  5. 債権者への配当
  6. 手続の終結

申立て準備

破産手続の申立を行うため、各種必要書類の準備から会社財産の保全、弁護士が依頼を受けたことを通知する受任通知の発出、事業の停止などを行います。
弁護士は、会社の確定申告書や試算表、権利関係の証拠となる契約書や請求書、会計帳簿などを収集していきます。他にも、必要に応じて車検証や、社会保険料および租税の金額を示す納付書・通知書等、多くの書類を集めなければなりませんので、これらを保有する会社も協力的に進めていかなければなりません。

弁護士の受任通知で債権者からの請求・取り立てが止まる

また、受任通知を弁護士から債権者に対して出すことになりますが、これは単に弁護士が代理人となったことを知らせるだけでなく、債権者からの請求や取立てを止めるという大きな役割を持ちます。弁護士が適切な発出タイミングを検討します。

事業停止はできるだけ早く、混乱の拡大を避ける形で実施

事業を停止するタイミングについては、会社の経済状況等を総合的に勘案し、できるだけ早い時期に設定することになります。ただし従業員に対する通知は事業停止当日に行うことが一般的で、そうして社内の混乱を最小限に留めます。支店など、複数の事業所を持っている場合には弁護士が各事業所に出向き、連携してそれぞれの事業書を同時に停止・閉鎖、混乱が広がらないように対処します。

会社財産は弁護士が預かり管理される

また、事業停止後に重要なことは会社財産の散逸を防ぐことです。弁護士はこの財産につき会社から引渡しを受け、管理していくことになります。
そこで破産の申立のために必要な書類以外にも、財産管理のため代表者印や銀行印、預金通帳、小切手帳から手形帳、決算書、売掛帳、その他財産に関係するものを預かることになります。

破産申立

収集された多くの書類や代表者との事情聴取を経て、弁護士が状況を分析していきます。
弁護士との打ち合わせでは事業開始から破綻に至るまでの経緯、依頼者が財産を隠したと思われるような裏の事情がないかどうか、様々なことを調べます。財産隠匿や一部の債権者へ不当な分配を企てている場合にはペナルティを受けることとなります。
これらの記録、書類をもって裁判所に提出、破産申立を行います。

破産開始決定と破産管財人選任

申立後、裁判所が書類を確認し破産手続開始の要件を満たすかどうかチェックします。そして要件を満たすと認められることで裁判所から破産手続開始決定がなされます。
この決定を受けると会社の財産すべては「破産財団」となり、自由に処分することは許されなくなり、同時に、債権者が会社に対し保全処分や強制執行をすでに行っていたとしてもその効力は失われることになります。
破産財団はその後裁判所から選任された破産管財人が管理し、処分方法等については会社の代表や弁護士と打ち合わせを行いながら決めていきます。

債権者集会

破産手続開始決定を受けてから数か月後、債権者集会が開催されます。
集会では破産管財人がその業務の結果を報告し、代表者も弁護士のサポートを受けつつ破産するに至った経緯等を債権者に説明しなければなりません。

債権者への配当

破産財団は破産管財人によって換価され、これは一般債権者らに対し平等に配当されることになります。原則はすべての債権者に対し平等な配当とされていますが、優先的破産債権を有する債権者は、他の者に優先して配当が受けられることも法定されています。
ただし優先されるかどうかは破産する債務者が自由に決めることではないため、長い付き合いがあるからといって優遇措置を取るようなことは許されません。

手続の終結

破産手続は廃止決定をうけることによって終了します。

倒産後の会社と経営者

破産によって倒産処理が行われた場合、会社の持っていた権利義務関係はすべて消滅します。というのも会社そのものが消滅することになるからです。そのため借入金の支払なども手続終結後は一切する必要がなくなります。

連帯保証人となっている場合、会社債務の弁済は経営者個人の責任に

しかし、ここで問題となるのが経営者個人の責任です。
基本的には代表取締役だからといって破産した会社の債務を負わされるようなことはありません。ただ、実情として会社が融資を受ける際には取締役などが連帯保証人となるような運用がされていることが多いです。

連帯保証契約は、債権者と、債務者である会社との契約との関係において一定範囲で連動性を持つものの別個の契約として扱われます。そこで、会社の持つ主債務が破産によって消滅しても、個人と契約した連帯保証は残ってしまいます。
連帯保証契約はそもそも主債務者が弁済しきれなかった場合に別の者が代わりに弁済を保障するという趣旨であるため、破産という事情があってもこれを切り離すことはできません。
よって、連帯保証をしていない債務であれば税金の未払いがあっても経営者個人には関係がありませんが、個別に連帯保証契約をしてしまっているものがあれば弁済義務が生じてきます。

弁済しきれない場合、会社破産とともに経営者個人の自己破産も視野に

ただし、この場合には弁済額が大きすぎて個人が弁済しきれないことも珍しくありません。このような事情により、会社の破産とともに経営者個人も自己破産するケースも多いです。
そうすることで、個人で負担することになる債務について免責を受けることができ、社会への復帰に向けて再スタートを切ることができるようになるのです。

他方、会社財産を不当に流出していたり、特定の債権者を優遇していたりしていると破産法における免責不許可事由に該当し、免責を受けられなくなることがあります。
そのため経済的なピンチが訪れたとしても経営者は一切の不正をすることなく、倒産手続に入らなければなりません。

個人についても破産をすべきかどうか、その場合どのような手続になるのか、この場合でも弁護士に相談をすることでスムーズに解決を図ることができるでしょう。

倒産は弁護士に相談!

倒産をするにしても、小さな額ではないお金が必要になります。この金額は会社や債務などの規模に応じて変わり、最低でも数十万円は必要で、場合によっては数百万円以上かかるケースもあります。

どのような手続によって倒産をするにも弁護士のサポートは欠かせませんので、費用を確保することができなくなってしまう前に弁護士に相談をするようにしましょう。

また、倒産と言ってもその処理方法にはいくつかありますし、弁護士のアドバイスを得ることで会社を再生することもできるかもしれません。いずれにしろ、倒産を考えはじめた段階ですぐに弁護士へ相談することをおすすめします。

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