管財事件の手続きとは?|破産管財人が選任される破産ケース

破産管財人

破産手続きでよく使われる「管財事件」の意味は?

破産管財人が選任される通常の破産ケースが「管財事件」

破産する会社に、債権者に配当できる財産があるとき、裁判所は破産管財人を通して財産の売却・換金、配当という手続きを行います。

破産管財人が選任されるこのようなケースを、法律用語で「管財事件」と呼びます。「事件」と聞くとあまりよい印象を受けませんが、要するに「案件」ということです。これが、本来の破産手続きです。もし破産会社に配当できる財産がない場合の手続きは、「同時廃止」と呼ばれますが、これは後で説明します。

管財事件の手続きの流れを知っておこう

管財事件の6つのプロセス

管財事件では、

  1. 予納金の納付
  2. 破産管財人の選任
  3. 債権届出期間の決定
  4. 債権者集会の期日指定
  5. 債権調査期日の指定
  6. 破産財団の換価・配当

という6つのプロセスによって進められます。以下では、6つのプロセスを詳しく説明していきます。

①まずは裁判所へ予納金の納付を

破産手続きを行うには、裁判所へ予納金を納めなければなりません。予納金の納付が確認されれば、破産手続きの開始決定とともに、破産管財人も選任されます。さらに、債権届出期間、債権者集会の期日、そして債権調査の期日という一連の決定も下されます。これ以降は、破産管財人が会社のすべての管財業務を行います。

裁判所に納める予納金額は、東京地裁の場合は以下の表にある通りです。予納金は負債額に応じて大きくなります。予納金は主に、裁判所による破産管財人の選任などの費用に使われます。また、破産する会社が財産を所有しておらず、予納金を払うこともできない場合は、同時廃止の手続きが適用されます。

負債総額 予納金基準額
5千万円未満 70万円
5千万円〜1億円未満 100万円
1億円〜5億円未満 200万円
5億円〜10億円未満 300万円
10億円〜50億円未満 400万円
50億円〜100億円未満 500万円
100億円〜250億円未満 700万円
250億円〜500億円未満 800万円
500億円〜1000億円未満 1000万円
1000億円以上 1000万円以上

②次に破産管財人となる弁護士を選任します

裁判所が、破産管財人として弁護士を選任します。破産管財人が選任された後は、破産会社の財産の管理・処分権はすべて管財人に移譲し、従来の経営陣が関わることはできません。破産管財人は会社の財産の売却・換金、残された取引先との契約解除などの管財業務を行い、財産をすべての債権者に平等に分配できるように務めます。

③裁判所が債権届出期間を決定

裁判所は、破産手続きの開始決定日から「2週間以上4ヶ月以内の日」を、債権届出期間として指定します。破産会社にお金を貸している銀行、取引先などの債権者は、この期間に債権を届け出る必要があり、破産債権者となって後日開かれる債権者集会で議決に加わることができます。

④債権者集会で債権者の意向を確認します

破産手続きでは、債権者による決議が行われます。これは債権者の意向を確かめ、債権者間の公平性を保つためです。裁判所は通常、破産手続きの開始決定と同時に第1回債権者集会の期日を指定します。

⑤債権調査期間に債権の確認や調査を行います

通常、「債権届出期間の最終日から1週間以上2ヶ月以内の期間」を、債権調査期日として裁判所が指定します。この期日内に債権の確認や債権額、優先順位などを決め、最終的に債権者に配当するための準備が行われるのです。

⑥残った財産を換金・配当します

破産会社に残っている財産は、「破産財団」としてまとめられ、売却されて換価(換金)されます。対象となるものは会社の不動産、設備や機械類、自動車、什器・備品に加え、有価証券など。しかし、実際は不動産が担保として設定されている場合が多く、「管財事件では担保権者の権利行使が妨げられない」という原則によって担保として取り上げられるので、不動産には「配当できる価値がない」とされるケースも少なくありません。

破産管財人は、配当を債権額に比例させ、届け出ている債権者に分配します。最終目的である配当が完了すると、破産手続きは終了となります。

破産費用さえ支払えない場合は同時廃止手続きに…

会社に財産が残っていない深刻な破産のケース

管財事件とは違い、破産する会社が財産を持っていない場合、同時廃止と呼ばれる手続きとなります。これは、財産をいろいろと調査しても債権者へ配当することができず、破産費用すら支払い不可能なさらに深刻な破産のケースです。同時廃止の場合、管財人を選任する必要がないので手続きが早く進み、費用も高くて数万円程度と、倒産会社の負担が軽くなるように設定されています。

取引先企業が同時廃止になってしまうと、自社に多額の未払い代金など債権があっても手も足も出せません。健全な事業活動を行うためには、取引先の経営状態をきちんと把握しておくことも、経営者の重要な役割と言えるでしょう。

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