債権回収の方法と流れ~未払い金の回収は弁護士への依頼が解決への近道

債権回収

会社経営を行っているとき、取引先や貸付先が支払をしなくなったら、早期に回収しなければなりません。遅くなると、相手に逃げられたり破産されたりして、取り立てが不可能になるおそれがあるためです。未払い金を回収するためには、押さえておきたいコツがあります。今回は、債権回収の方法と流れ、弁護士に相談するメリットをご紹介します。

債権回収は、早めに取り組む必要がある

債権の例

企業が社会内で活動をしていくときには、いろいろな債権債務関係が発生するものですが、具体的には、どのような債権が発生するのでしょうか?まずは、例を見てみましょう。

売掛金

取引先に商品や製品、原材料などを納入したら売掛金が発生します。

貸付金

他社や個人などにお金を貸し付けた場合に発生します。

損害賠償請求権

相手に契約違反や不法行為などがあると、損害賠償債権が発生します。

請負代金

工事業者が工事を完成したら、請負代金が発生します。

賃貸料

不動産などを賃貸しているとき、相手が不払いになると、発生します。

このほかにも、債権の種類はいろいろあります。

債権回収が遅れると、どうなるのか?

このように、いろいろな債権をかかえていると、すべてが円滑に支払われるとは限りません。債務者が支払をしない場合、債権回収をしなければなりません。支払いを受けられないまま放っておくと、どのような問題があるのでしょうか?

逃げられるおそれ

まず、相手に逃げられるおそれがあります。債務を抱えているのに支払をしない相手というのは、他社からも債務を負っていることが多いです。そこで、支払いが出来なくなって、夜逃げ同然で逃げてしまうことがあります。実際に逃げられてしまったら、回収することは困難になります。

破産されるおそれ

相手が破産その他の整理手続きに入ってしまうおそれもあります。相手が多くの債務を抱えて支払不能の状態になっていると、私的整理や法的整理の方法で、債務整理をしてしまうのです。そうなると、手続きにもよりますが、債権者にはほとんど配当が行われません。たとえば相手に破産されたら、配当が1%~3%などということも普通にあります。

そこで、債権回収をするときには、相手が整理手続きに入る前に、早めに対処する必要があります。

他の債権者に先を越される

債務者が多くの債務を抱えていて、他の債務についても支払いが遅れている場合、他の債権者も考えることは同じです。「早く回収しなければならない」ということです。

そこで、自社の判断や対処が遅れると、他社が先に動いて債権回収をしてしまいます。すると、債務者からはめぼしい資産が失われて、「自社が回収に取りかかる頃には、何も残っていない」、という状態に陥ります。

以上のように、債権回収は、遅れれば遅れるほど不利益を受けます。相手に取り立て対象の資産があるうちに、他の企業に先んじて、とにかく早めに取り組むことが何より重要です。

債権回収の方法

それでは、債務の支払が滞ったとき、どのような方法で債権回収をすることができるのか、具体的な方法をご紹介します。

任意で支払いを受ける方法

1つ目の方法は、相手から任意で支払いを受ける方法です。相手と話し合いをして、支払期限を決めて、合意をします。合意書を締結して支払を確実なものとして、約束通りに支払をしてもらいます。この方法によって回収ができると、もっとも手間なく債権回収ができます。

また、相手との関係を悪化させずに回収ができるので、債権回収後も相手との取引を継続しやすいメリットがあります。

公正証書を作成する

任意で支払いを受けるとき、1つ注意点があります。それは、相手との合意内容を必ず公正証書にしておくべきということです。

もし、公正証書がなかったら

相手と和解ができたとき、当然支払についての合意書を作成します。ただ、単なる合意書には強制執行力がありません。そこで、相手が支払を滞納しても、合意書を使って相手の資産を差し押さえることはできません。取り立てを行うためには、相手に裁判を起こし、裁判所から支払い命令の判決を出してもらわないといけないのです。

訴訟をすると3ヶ月~6ヶ月くらいはかかりますし、手間もかかるのでデメリットが大きいです。

その間に相手に破産されてしまうかもしれません。

公正証書がある場合

これに対し、公正証書には強制執行力があります。そこで、相手が支払を滞納したとき、裁判をせずにすぐに公正証書を使って相手の資産を差し押さえることができます。そうすれば、他の債権者に先を越されることもありませんし、裁判をする手間も費用も省けます。

このように、スピーディーな対応を求められる債権回収を成功させるためには、合意書を公正証書にしておくことは必須です。

公正証書の作成方法

公正証書によって相手の資産を強制執行できるようにするためには、「強制執行認諾条項」という条項を入れてもらう必要があります。また、公正証書は、一方当事者が勝手に作成することができず、相手の協力が要ります。そこで、相手と話合いをするときに、公正証書の作成についても話合い、同意をとっておきましょう。

その上で、最寄りの公証役場に行き、申込みをします。すると、担当の公証人が決まり、必要書類などの指示を受けます。必要書類を揃えて指定された日にちに当事者双方が行けば、公証人が公正証書を作成してくれます。

代理人に委任することもできる

当事者が忙しい場合、委任状を作成したら、代理人に公正証書を作成してもらうこともできます。顧問弁護士などがいるなら、代わりに行ってもらうと、自分は普段通り業務に取り組むことができるので、便利です。

裁判上の和解(即決和解)

債権回収の方法として、即決和解があります。即決和解と言われても、聞いたことがない方が多いかもしれません。これは、簡易裁判所で行う和解の手続きです。

和解とはいっても、簡易裁判所で裁判を起こして和解をする、という意味ではありません。事前に裁判外において、当事者間で話し合いができているときに、その内容を簡易裁判所に伝えて、裁判所の和解調書にしてもらう手続きです。先ほどご紹介した公正証書に代えて、裁判所の和解調書を作成してもらうようなイメージです。

即決和解のメリットは、金銭請求以外の請求権についても強制執行力を認めてもらえることです。わかりにくいかもしれないので、公正証書の場合と比較して説明をします。

公正証書の場合

公正証書の場合には、金銭請求についてしか、強制執行認諾条項をつけることができません。お金を請求するときに、相手が支払を滞納したら、そのお金の支払いの分については強制執行をすることはできます。しかし、たとえば相手に不動産の明け渡しを求める場合、不動産の明け渡しはお金の支払いではないので、公正証書によっては強制執行をすることができません。もの引き渡しを求めるときなども同じです。

和解調書の場合

これに対し、裁判所の和解調書なら、金銭債権に限らず強制執行力が認められます。不動産の明け渡しを約束したときには、相手が応じない場合、債権者は和解調書を使って強制執行を申し立てて、相手に明け渡しをさせることができます。物の引き渡しを約束しているときも同じで、和解調書があれば、強制的に物品を取り立てることができます。

即決和解の方法

即決和解を利用するためには、まずは当事者同士で話し合いをして、合意内容をまとめます。争いがある場合には即決和解をすることはできません。合意ができたら、その合意内容を添付して、簡易裁判所に即決和解を申し立てます。そうすると、和解期日が入るので、その日に裁判所に行くと、手続きができます。その後、裁判所から当事者双方に和解調書が送られてきます。

顧問弁護士に対応してもらおう!

即決和解をするときには、公正証書よりも日にちがかかってしまいますし、当事者双方が裁判所に行かないといけないので、手間にもなります。ただ、弁護士に対応を依頼したら、当事者は裁判所に行く必要はありません。そこで、顧問弁護士がいるなら、弁護士に代わりに手続きをしてもらうと良いでしょう。

以上のように、公正証書と和解調書とでは、強制執行力が及ぶ範囲が異なりますし、かかる時間や手続き方法も、違います。ケースによって、適切な方法を選択すべきですが、自分ではどちらの方法が良いか判断しにくいなら、弁護士に相談すると良いでしょう。

仮差押

相手と話し合いをしても、支払についての合意ができないことがあります。その場合には、相手の資産を仮差押すべきです。仮差押とは、裁判が確定するまでの間、相手の財産を仮に動かせなくするための手続きです。

相手と話合いをしても支払いを受けられないなら、裁判せざるを得なくなります。ただ、裁判には非常に時間がかかります。最低でも3ヶ月、長びくと8ヶ月くらいかかる可能性もあります。その間に、相手が資産を隠してしまうかもしれません。

預貯金があったら現金化したり使ったりしてしまいますし、不動産があったら売却したり名義変更したりする可能性があります。裁判中にこのような資産隠しをされると、その後判決が出たときに強制執行をしようとしても、その資産が「ない」ことになって、取り立てができなくなってしまいます。

そこで、資産隠しを防止するために、仮に相手の資産を凍結させる必要があるのです。仮差押をすると、相手は対象の資産を自由に処分できなくなります。預貯金は凍結されて動かせなくなりますし、不動産の名義変更や担保設定などもできなくなります。

仮差押をする方法

まずは、差押え対象資産を見つける

仮差押を行うときには、地方裁判所に「仮差押の申し立て」をしなければなりません。まずは、何を差し押さえるのかを決めます。相手に対する影響もあるので、「全ての資産を差し押さえる」ことは基本的に難しいのです。まずは相手に影響に少ない不動産、それがなければ債権や動産、という順番になります。また、仮差押の対象資産は、債権者が自分で見つけないといけません。

そこでまずは相手に不動産がないかを探し、それがなかったら銀行預貯金や動産類を探す必要があります。相手が普段使っている銀行口座を把握している場合には、その口座を差し押さえると良いでしょう。

申し立てと審尋

また、仮差押を認めてもらうためには、保全すべき権利内容と仮差押が必要な事実を裁判所にわかってもらう必要があります。書面(申立書)による申請をしますが、その後裁判所で審尋(質問の手続き)が行われるので、そのときに裁判官の質問に答えなければなりませんし、不足があれば追加の書類提出が必要です。

仮差押が認められたら、裁判所から「仮差押命令」が下されます。これが銀行に送達されたら、銀行口座が凍結されますし、不動産の仮差押なら、対象の不動産に仮差押の登記が行われます。

仮差押のメリット

仮差押をすると、相手の資産を凍結できるので、資産隠しを防止できるメリットがあるのは明らかです。それ以外にも、隠れたメリットがあります。それは、仮差押をすると、相手が「取り下げてほしい」と思い、任意で支払に応じる可能性があることです。

たとえば普段利用している銀行口座を差し押さえられたら、相手は経営に大きな支障が出るので、取り下げを求めてくることがあります。このとき、債権者が「きちんと支払をしたら取り下げる」というと、相手が任意に支払いをするのです。このことにより、わざわざ裁判をしなくても債権回収することが可能になります。

仮差押は、債権回収の重要なポイントになる方法なので、是非とも覚えておきましょう。

調停

債権回収の方法としては、調停もあります。これは、簡易裁判所の調停手続きを使って、相手と話合いをする方法です。調停をするときには、簡易裁判所の調停委員に間に入ってもらい、相手との話合いを仲介してもらいます。

ただ、調停は、スピーディーな対応を求められる債権回収にはあまり向かない方法です。申し立ててから第一回期日までに1ヶ月くらいかかりますし、その後も月1回くらいしか調停期日が入らないため、成立するまでに3ヶ月~6ヶ月くらいかかります。

調停をしても、合意ができなければ、何も決まらないので手続きをしていた時間が無駄になります。その後、裁判をしないといけないので、そのようなことであれば、調停をせずに直接裁判をしたら良かった、ということになってしまうのです。

調停を利用すべき場合

それでは、調停を利用すべき場合はどういったケースなのでしょうか?調停のメリットとともに、確認しましょう。

調停のメリットは、手続きが完全に非公開であることです。裁判は公開法廷で行われるので、第三者に知られることを避けることはできません。そこで、秘密性の高い問題を扱う場合などには、調停が向いています。

また、調停のもう1つのメリットは、相手との関係が悪化しにくいことです。仮差押をして裁判、という一般的な流れを利用すると、相手との関係は相当悪化します。相手が取引先の場合には、裁判後、以前と同様の取引を続けるのは難しくなるでしょう。

調停なら、間に調停委員が入ってくれて、マイルドな雰囲気で話合いができますし、最終的に双方が納得する内容で合意ができるので、お互いの関係が悪化しにくいのです。そこで、相手との取引や関係を継続したい場合には、調停を利用するメリットがあります。

支払督促

債権回収の方法として、支払督促もあります。これは、金銭の支払いを請求するときに、簡易裁判所に申し立てをして、相手の財産を差し押さえる権利を認めてもらう方法です。支払督促を申し立てると、相手が2週間以内に異議を出さない場合、相手の資産を強制執行できます。

普通に裁判をすると、こちらが債権の存在や、支払期限が到来している事実を証明しなければなりません。相手方が争ってくると、反論も必要になります。

支払督促の場合、債権の細かい資料は不要ですし、相手方との書面の応酬もありません。2週間以内に異議がなければ、無条件に差押えができるので、非常にスピーディーです。そこで、相手が異議を出さないことが予想される場合には、通常訴訟をする前に、いったん支払督促を申し立ててみるのも、1つの方法です。

支払督促を利用する方法

支払督促を申し立てるときには、簡易裁判所に「支払督促申立書」を提出します。特に証拠などの添付は必要ありません。すると、簡易裁判所から「支払督促発布通知」が送られてきます。この後、2週間の間、相手から異議が出なければ、差押えができる状態になります。

このとき、実際に差押えをするためには、「仮執行宣言申立」をしなければなりません。仮執行宣言申し立てを30日以内にしない場合、支払督促の効果がなくなってしまい、差押えはできなくなるので、注意が必要です。仮執行宣言を申し立てると、裁判所から「仮執行宣言付支払督促」をもらうことができます。これを使って相手の資産を差し押さえることが可能になります。

支払督促の注意点

支払督促には、注意点もあります。

1つ目は、支払督促をしても、相手から異議を出される可能性が高いことです。支払督促への異議は、「異議を申し立てます」という簡単な書類を提出するだけでできますし、裁判所から債務者に支払督促申立書を送るとき、異議申立書の書式なども一緒に入れて送るので、多くの債務者は簡単に異議を出してしまいます。異議を出されると、手続きは自然に通常訴訟に移行するので、支払督促をした意味は無くなります。

また、支払督促が通常訴訟に移行したときの裁判所の管轄にも注意が必要です。この場合、債務者の住所地の裁判所になってしまうからです。支払督促をせずにはじめから裁判をしたら、債務の履行地や債権者の住所などで裁判できることも多いので、債権者の近くの裁判所を利用することができます。

これに対し、支払督促から通常訴訟に移行すると、相手の近くの裁判所になってしまうので、相手が遠方の会社や個人などの場合、非常に不便になってしまいます。

そこで、相手が遠方の場合には、リスクのある支払督促を利用せず、始めから裁判を起こす方が望ましいです。

少額訴訟

債権は、大きな金額のものばかりとは限りません。30万円や50万円などの少額のものもあります。このように、少額の債権を回収するために、わざわざ3ヶ月も6ヶ月もかけて、裁判をするのはばからしいと思うこともあるでしょう。

そこで利用できるのが、少額訴訟です。少額訴訟とは、60万円以下の少額の金銭債権を請求するときに利用できる、簡易な裁判手続きです。通常の訴訟よりも大きく手続きが簡略化されていて、1日の審理ですべての手続きを終えてもらうことができます。通常の裁判のように、当事者双方が主張書面を出し合って争点整理をすることもありませんし、証拠についても厳密なものを要求されません。証人尋問も非常に簡単になっています。そこで、弁護士を雇わなくても、本人が自分で対応しやすいです。

通常訴訟なら、3ヶ月~6ヶ月くらいはかかるのですが、少額訴訟なら申し立てから1ヶ月程度で終わるので、早期に解決できるのもメリットです。

少額訴訟を利用する方法と流れ

少額訴訟を利用するときには、簡易裁判所に訴状を提出する必要があります。少額訴訟は支払督促とは異なり、ある程度の主張と立証が必要です。そこで、書面には法的な理由を書かなければなりませんし、主張内容を証明するための証拠の添付も必要です。少額訴訟をしても、適切に手続きを進めないと負けてしまうこともあるので、注意が必要です。

訴状と証拠を提出すると、裁判所から相手に対し、これらの書類の写しと呼出状が送られます。すると、相手から答弁書という反論書が提出されることがあります。

指定された日にちに裁判所に行くと、訴訟の期日が開催されます。そこでは、当事者が提出した書面を確認し、証人がいたら簡単に証人尋問を行い、判決が行われます。また、裁判官や司法委員の関与によって、和解がすすめられることも多いです。和解ができたら、和解調書が作成されて、その内容に従って相手から支払いを受けることができます。

通常訴訟

請求金額が60万円を超える場合には、少額訴訟を利用することはできません。また、少額であってもきちんと厳密な事実認定をしてもらいたいというケースもあります。その場合には、通常訴訟をしなければなりません。通常訴訟は、いわゆる「裁判」です。売掛金を請求するなら売掛金請求訴訟ですし、貸付金を請求するなら貸金返還請求訴訟、賃料の請求なら賃料請求訴訟などとなります。

訴訟では、厳密な主張と立証活動が必要

通常訴訟をするときには、法的な根拠をまとめた書類を提出しなければなりませんし、相手から反論があったら、適切に再反論しなければなりません。厳密に証拠による事実認定が行われるので、証拠を揃えないといけませんし、相手から反証があったら、それをつぶすための証拠が必要になることもあります。

訴訟には長い時間がかかる

訴訟には、長い時間がかかります。債権回収の事案でも、最低3ヶ月、長い場合には8ヶ月程度かかるでしょう。

裁判が終わると、裁判官が判決を出してくれます。こちらの言い分が認められたら相手に対する支払い命令がでるので、それに従って相手から支払いを受けることができます。相手が支払をしない場合、判決を使って相手の資産を差し押さえることも可能です。

和解できる可能性

裁判をしても、必ず判決によって終了するとは限りません。判決となると、勝てば支払いを受けられますが、負けると0になる可能性もあるので、リスクが高いです。それは、相手にとっても同じです。また、判決が出ても、相手が任意に支払をしなければ、相手の資産を差し押さえなければなりません。

このような0か100かの解決をするよりも、お互いに歩み寄って和解をした方が良いと考えるケースもあります。和解をすると、相手が支払可能な範囲で分割払いにすることもできるなど、柔軟な解決をすることができます。また、裁判所で約束をした、ということで相手にも「約束を守ろう」という意識が生まれ、判決の場合よりも支払いを受けやすいというメリットもあります。

もちろん、和解調書にも強制執行力が認められるので、相手が支払をしないときには、相手の資産を差し押さえることができます。

弁護士に依頼する必要がある

訴訟の手続きは非常に専門的で、普通の素人が自分で進めていくのは困難です。うまく進めることができなければ、負けてしまうおそれもあります。せっかく手間と時間をかけて訴訟をしても、負けたら意味がありません。

そこで、訴訟をするときには必ず弁護士に依頼すべきです。特に、普段から相談をしている顧問弁護士に相談すると、スムーズに対応してもらえますし、顧問弁護士に訴訟を依頼すると、着手金や報酬金の割引を受けられることも多く、メリットが大きいです。顧問弁護士がいると、いざというときに安心です。

強制執行

債権回収の最終手段とも言えるのが、強制執行です。強制執行をすると、相手が支払をしないときでも、相手の資産から直接取り立てをすることができます。たとえば、相手の不動産を差し押さえて競売にかけて、売却金から債権の満足を得ることができますし、相手の銀個預金を差し押さえて、預金から債権の満足を得ることも可能です。相手の敷金や給料、退職金や売掛金なども差押えの対象になりますし、相手のトラックや車、その他の動産類についても差押えができます。

強制執行の注意点

強制執行をするときには、注意点があります。それは、執行対象の資産は、債権者が特定しなければならないということです。「どこかの不動産」とか「どこかの預金」などという情報では、相手の資産を差し押さえることができません。不動産なら不動産登記簿謄本を取得する必要がありますし、銀行預貯金ならどこの銀行のどこの支店かまで明らかにする必要があります(口座番号までは不要です)。

また、相手に資産がないときには、強制執行をする対象がないので、取り立てができません。その意味でも、債権回収は、他の債権者が取り立てをする前に、早期に動いて差押えの手続きをする必要があるのです。

強制執行をするメリット

強制執行をすると、相手の財産を取り立てることができる以外にもメリットがあります。
たとえば、相手の車を差し押さえたとき、車を売却しても債権の満足を受けられない可能性もあります。その場合でも、車が相手にとって必須の財産であれば、差押えを取り下げてもらうために、相手の方からお金を払ってくることがあります。たとえば相手が運送業者の場合に車を全部差し押さえたら、相手は仕事ができなくなってしまうので、影響が大きいです。何とかお金を用意して、お金を払ってくるでしょう。

このように、強制執行は、実際にその財産を売却して債権の満足を得る以外にもメリットがあるので、是非とも覚えておきましょう。

強制執行ができるケース

強制執行ができるケースを、まとめておきます。

  • 公正証書があるとき
  • 即決和解の調書があるとき
  • 調停調書があるとき
  • 支払督促の仮執行宣言があるとき
  • 裁判の和解調書があるとき
  • 裁判の判決書があるとき

以上を見ると、公正証書や即決和解を利用すると、裁判などの面倒な手続きを省けて便利だという意味がよくわかることでしょう。スピーディーな債権回収の方法を実現するためには、手続選択が非常に重要なのです。

債権回収の流れ

次に、債権回収の流れを確認します。

まずは、相手に状況を確認する

相手から予定日までに入金がない場合、いきなり内容証明郵便などによって請求をするのではなく、まずは状況を確認しましょう。「入金がないのですが、どのようになっていますか?」と尋ねます。相手としても、ミスで入金漏れになっているだけかもしれませんし、お互いに手違いが起こっている可能性もあるので、明らかに不払いになっている場合を除き、まずはこのステップを踏んだ方が良いでしょう。

内容証明郵便を送付して話し合う

相手が不払いを起こしているのであれば、相手に対し、内容証明郵便を使って支払の請求書を送付します。これにより、確実に相手に請求をした事実が明らかになりますし、相手にとってもプレッシャーとなります。

内容証明郵便が相手に到着すると、その後相手と支払についての話し合いを行います。

公正証書を作成する、即決和解をする

相手と話合いが成立したら、その内容を合意書にまとめなければなりません。このとき、公正証書または即決和解を利用します。通常の金銭請求であれば、公正証書で十分であることが多いでしょう。どちらがいいのかわからない場合には弁護士のアドバイスを受けると良いです。

調停をする

相手と直接話をしても合意ができない場合、相手との関係を崩したくないケースや内容を秘密にしたい場合などには、調停を利用して話を進めましょう。

仮差押をする

相手と交渉をしても支払をしてもらえない場合、多くの場合には訴訟に手続きを進めます。訴訟提起前、まずは相手の資産を探して仮差押をしておきましょう。仮差押をすると、相手の方から「支払をするから取り下げをしてほしい」と言ってくることもあります。そうすれば、訴訟をしなくても債権回収が可能となります。

裁判を提起する

仮差押をしたら、相手に訴訟を提起します。多くの場合には通常訴訟となるでしょうけれど、ケースによっては少額訴訟などを利用することもあるでしょう。弁護士に裁判手続きを進めてもらいましょう。

裁判をするときには、月1回くらい期日が開かれます。期日には弁護士だけが出頭すれば良いので、当事者(代表者など)は、裁判所に出頭する必要はありません。ただし、証人尋問を行うとき、会社の関係者の尋問が必要なら、その日は出頭する必要があります。また、和解期日にも裁判所に呼ばれることがあります。和解か判決により、裁判は終結します。

強制執行をする

裁判によって判決を得たら、判決によって相手の財産を強制執行することができます。仮差押をしていた場合には、それを本執行に切り替えて、それまで仮に差し押さえていた資産を換価し、取り立てることができます。この手続きにより、ようやく債権回収が完了します。

債権回収を弁護士に依頼するメリット

債権回収を行うときには、弁護士に手続を依頼するとメリットが大きいです。

手続きを代行してもらえるので、会社は経営に専念できる

債権回収では、いろいろと手間のかかることが多いです。相手との連絡や書類作成、戦略の構築、合意書作成や公正証書などの手続きが必要ですし、裁判になったらさらに面倒な手続きがたくさんあります。このような手続きを、会社が普段の経営をしながら片手間に行うのは大きな負担となります。債権回収のために経営がおざなりになって、収益が落ちてしまっては何の意味もありません。

ここで弁護士に対応を依頼すると、面倒な作業や必要な手続きは全て任せられます。依頼者は経営に専念できて、大きなメリットがあります。

適切な手続きを選択できる

債権回収には、非常にさまざまな手続きがあり、ケースに応じて適切な方法を選択する必要があります。たとえば調停か少額訴訟か通常訴訟かなどを迷うこともあります。自分では、どの方法が最適か、わからないことも多いでしょう。間違った手続きを選択すると、効果が半減してしまい、債権回収に失敗する可能性が出てきます。

弁護士に相談していると、ケースに応じた最適な手続きを選択できるので、大きなメリットがあります。

早期に回収できる

債権回収では、スピーディーな対応が命です。ところが、自分で対応をしていると、早期に取り立てを行うことは難しいです。任意で交渉をするにしても、相手にのらりくらりとかわされて、その間に資産隠しをされてしまうおそれがあります。

弁護士に依頼したら、ノウハウも豊富に持っているので、その都度最適な方法を選んでスピーディーに債権回収を実現してくれて、債権回収に成功しやすいです。

相手が真剣に対応する

本人が相手に支払いを請求しても、相手は真剣に対応しないことがあります。適当に言い訳をしていたら、逃れられるだろうと思われるのです。そのような相手といつまで話をしていても、債権回収することはできません。

ここで弁護士に依頼すると、相手もこちらが本気であることを認識するので、うやむやな対応はしなくなります。相手にしても、裁判をされるのは嫌だと考えることが多いです。自分で交渉をしていたら無視されていたケースでも、弁護士に内容証明郵便を送ってもらった、相手が真剣に受け止めて、支払に応じるケースもあります。

裁判手続きを利用しやすい

債権回収では、いろいろな裁判手続きが必要になります。代表的な手続きは、仮差押と通常訴訟ですが、それ以外にも支払督促や調停、少額訴訟や即決和解などを利用することもあります。また、これらの手続きの利用を検討するので、弁護士にアドバイスを求めたいこともあるでしょう。

このようなとき、弁護士に相談していたら、スムーズに最適な裁判手続きを進めてくれるので、安心ですし、効果も上がりやすいです。

精神的負担を軽減できる

債権回収は、意外と精神的に負担のかかる作業です。「いつ回収出来るのか」「本当に支払われるのか」などと考えてイライラしてしまいますし、相手から反論が来たら、再反論のためにさらにストレスが募ります。普段の経営に支障が及ぶこともあるでしょう。

ここで弁護士に対応を依頼していたら、弁護士がすべて対応してくれますし、法律のプロが対応しているという安心感から、こうした精神的な負担を軽減できるので、メリットが大きいです。

債権回収を弁護士に依頼するデメリット

費用がかかる

債権回収を弁護士に依頼すると、デメリットもあります。それは、やはり弁護士費用がかかることでしょう。

ただ、債権回収に関しては完全成功報酬制を採用している事務所もあり、そうした事務所に依頼したら、弁護士費用の分足が出ることを防げます。また、顧問弁護士であれば、通常料金より割引をしてくれることも多いので、思ったほど料金がかからないこともあります。

相手方との関係が修復困難な状態になる

弁護士を使って相手に支払い請求をしたり訴訟をしたりすると、相手との関係は破壊されてしまうことが多いでしょう。今後も継続的に取引をしたいなら、なるべく自分で穏便に進めた方が良いです。

ただ、自分で話をするにしても、弁護士に相談しながら進めると、債権回収に成功しやすくなります。顧問弁護士がいると、いつでも気軽に弁護士に相談できるので、安心です。

債権回収は弁護士に相談しよう!

以上のように、債権回収をするときには、スピードと手続選択が非常に大切です。自分で手続きを進めると、そのどちらも実現することが難しいため、確実に成功させたいなら弁護士に相談して手続を依頼すべきです。

弁護士に依頼すると、自分は会社経営に専念できるので、経営に対する悪影響も防止できますし、顧問弁護士がいたら、費用も大きくなりにくいです。

不良債権が発生したら、早期に弁護士に相談して回収してしまいましょう。

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