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売掛金トラブルでは、時効に注意
債権と債務について知っておこう
オーダーを受けて商品をつくったり、販売したりするなど、何らかの契約に基づいて、相手に金銭や物品を請求できる権利を「債権」といいます。この際、一方の相手方には、金銭や物品をわたす義務である「債務」が生じます。
債権には民法で規定された消滅時効があり、定められた期間が過ぎてしまうと、債権が消滅します。債権が消滅すると、当然、一方の相手方の債務もなくなってしまいます。つまり、「商品を販売したのに相手がお金を支払ってくれない」というケースでも、相手に支払ってくれるように交渉をしているうちに、時効になってしまうということもあるわけです。
売掛金トラブル中に時効になってしまったら?
消滅時効を迎えると債権はなかったことに…
「相手方に請求書を送ったのに、期日までに支払いがない」。そこで、連絡をとってみたところ「必ず払うのでちょっと待ってほしい」と言われたとします。仕方がないので、時間をおいて再度、連絡をとってみると、「もう少し待ってくれ…」。そんな繰り返しのうちに時効が来てしまうと、売掛金を回収できる見込みはありません。
相手方の債務は時効により消滅してしまっているため、「払う義務はない」と開き直られてしまえば、債権を持っていた側はそれまでなのです。売掛金トラブルに見舞われたら、時効についても気にかけておきましょう。
債権の時効は、その内容によって細かく規定されています。主なものを挙げてみましょう。
6ヵ月 | 小切手債権 | 小切手法51条 |
約束手形債権 | 手形法70条 | |
1年 | 飲食・宿泊代金、運送費など | 民法174条 |
2年 | 生産・商品の売買代金など | 民法173条 |
塾の授業料 | 民法 173条 | |
弁護士・公証人の債権 | 民法172条 | |
3年 | 医師・請負人の債権 | 民法170条 |
建築工事に関する代金 | 民法170条 | |
5年 | 商行為に関する債権 | 商法522条 |
10年 | 個人間の債権 | 民法167条 |
商法上の時効と民法上の商行為に関する債権の期間の違いなどもあり、消滅時効期間の判断は、なかなか難しいもの。ですから、弁護士に相談するなど、専門家の判断を仰ぐのが得策です。
消滅時効はいつからカウントされる?
支払期日の翌日が消滅時効の起算日となる
ある企業との取引で、あなたの会社が品物の製作を請け負ったとします。そして、その取引の消滅時効は5年だとします。では、この5年はいつから数えた5年になるのでしょうか。
そうした消滅時効の起算日にいては、契約書に記された取引の支払い期日が大きく関わります。たとえば、取引の支払い期日が4月30日だとすると、業務が終了した日や請求書を送付した日がいつであろうと、翌5月1日から時効期間のカウントが始まります。そして、5年後の4月30日をもって債権が消滅します。
時効期間の進行を止める方法
「請求」「差押え、仮差押えまたは仮処分」「承認」
時効による債権の消滅にストップをかける方法があります。これを時効の中断(停止)と呼びます。つまり、一定期間、消滅時効の進行を止めることができるわけです。
時効を中断させるには、「請求」「差押え、仮差押えまたは仮処分」「承認」のいずれかの方法をとらなければなりません。このうち、「差押え、仮差押えまたは仮処分」とは読んで字のごとく、裁判によって相手の財産などを差押えたりした場合。「承認」とは相手が売掛金の一部を支払ったり、支払いの猶予の申し出があったりした場合です。
裁判や内容証明郵便による催促でも中断に
「請求」には裁判上の請求と裁判外の請求があります。裁判上の請求とは、裁判所に支払督促や民事調停の申し立てなどをすること。裁判になれば、時効は中断するわけです。次に裁判外の請求ですが、これは内容証明郵便による督促によって、時効の進行を最大で6ヵ月まで中断させることができるというものです。
内容証明郵便による時効中断の注意点
あくまでも一時的措置であることに留意!
内容証明郵便による督促によって、時効の進行を6ヵ月止めることができます。しかし、もともと定められた消滅時効期間内に、裁判所に訴え出るなどの行動を起こさなければ、当初の消滅時効期間が適応されてしまいます。
つまり、内容証明郵便による時効の中断は、時効によって債権が消滅してしまうことを防ぐための一時的措置です。再度、内容証明郵便を送ればさらに延長されるというようなことはありません。あくまでも、提訴するなどの行動を起こすための準備期間としての6ヵ月であることに留意しましょう。
内容証明郵便による時効中断の注意点
個々のケースで消滅時効を判断するのは難しい
繰り返しますが、債権に関する消滅時効にはさまざまなものがあり、法律の知識がない経営者や担当者が必ずしも正確に把握できないケースもあります。また、売掛金トラブルは、対応が後手にまわればまわるほど、当事者同士で円満に解決することが難しくなります。
そこで、企業法務に強い弁護士に相談すれば、それぞれの状況に応じた解決法の提案など、有効なアドバイスが期待できます。売掛金トラブルでお困りの際は、「もう裁判しかない!」という状況になる前に、ぜひ早めに専門家に相談してみましょう。
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