契約書作成のポイントと注意点!必ずおさえるべき6つのポイント

契約書作成

契約書作成で重要な6つのポイント

契約書を作成する際には、締結する契約の内容に応じて記載しなければならない具体的な内容が変わってきます。

契約書作成時には細かな点にまで気を配る必要がありますが、重要なことは契約の内容ごとに必要な条項を丸々覚えることではありません。

まずは、以下のポイントを押さえるようにしましょう。

  1. 契約書を作成する目的を理解する
  2. 権利義務を明確にする
  3. 当事者を明確にする
  4. 具体的トラブルを想定して作成する
  5. 第三者が契約書を見ても分かるように作る
  6. 関連法令の下調べをする

契約書を作成する目的を理解する

そもそも契約書は、基本的に、契約の締結において必須とされるものではありません。日本では当事者の意思表示さえあれば成立し、「申込」とこれに対する「承諾」があれば足ります。
つまり書面の作成は効力の発生に関係なく、口頭であっても良い、ということになります。

それではなぜ書面化をするのでしょうか。その理由は取引のリスクをカバーするためです。
契約内容に反した場合最終的には裁判所に救済を求めることになりますが、口約束で互いの権利や義務を取り決めていると約束内容が本当かどうか判断できなくなってしまいます。

裁判所で判断ができるよう、そのための証拠として残すために作成しているのです。裁判所を介さずとも、契約書という証拠があることによって当事者間でトラブルを早期解決すること、さらにトラブルを防止することにも役立ちます。
また、ルールを明確にし、遵守の意識を高めるという目的も持ちます。

つまり、契約書を作成する目的とは、契約締結ではなく、その後のトラブル防止にあるのです。

権利義務を明確にする

トラブルの防止が最も重要な契約書を作成する意義であることを理解した上で、必要になってくるのは権利と義務の内容を明確にしておくということです。

ただ単に契約書を作って書面化すれば証拠になるわけではありません。どのような権利義務が発生することになるのか記載しなければなりません。

契約書の特徴は、自社の権利義務および相手方の権利義務を書いた書類である点にあります。
契約条項を作成するときには、どのような権利や義務を意味するのか明確に示すよう意識していかなければなりません。

当事者を明確にする

誰と誰が契約を結ぶのか、誰が誰に対し権利を行使し得るのか、当事者について明確にすることも必要です。
権利義務が明確化されても、それを誰が有し、誰に対するものなのか分かるようにしなければ効力をなさないことがあります。
常識的に考えてどちらの権利義務なのか想定できるケースであっても、その程度やトラブルの複雑さによっては証拠として認められなくなるかもしれません。

具体的トラブルを想定して作成する

契約書上で権利義務および当事者を明確にしておくのは、最初に説明したトラブルを防止することが一番の目的で、そのための手段です。
そこで、契約書作成によってより現実的にトラブルを防ぐためには、その契約において予想されるトラブルを具体的に考えることが大切になってきます。

たとえば、単純な売買契約であっても、以下のようなさまざまなトラブルが想定されます。

  • 代金が回収できない
  • 仕入れができず納品が遅れる
  • 製品に不良がある
  • 商品が送られてこない
  • 第三者の権利を侵害している

これを防ぐこと、さらにこうした事態が生じたとしても損害を受けないためにはどうすればいいのか考えながら契約書を作成するといいでしょう。

第三者が契約書を見ても分かるように作る

契約書を作成して、それを裁判などで証拠として利用するためには、第三者が見ても契約書の内容が理解できなければなりません。

権利義務、当事者を明確に記載することとも関係しますが、その他文章の表記、構造、用語の定義など、読む側が困惑しないよう分かりやすい文書となるようにしましょう。

最終的にはやはり裁判所で利用されることなるため、裁判上で用語の意味について相手方から思わぬ主張をされないようにしなければなりません。そのため、契約書を作成する際には用語の定義も重要になります。

関連法令の下調べをする

基本的には当事者間の意思表示で契約が成立しますが、法律でルールが定められているものもあります。
当事者間でその法律上のルールを上塗りするように取り決めを行うことができるケース、そのルール内で取り決めを行わなければならないケースがあるため、関連する法律については下調べしておく必要があります。

たとえば、個人情報の内容によっては本人が同意をしていても第三者提供が許されないといったルールが定められています。
自分たちに関することだから自由に定められるとも限らないのです。

また、書面化することが義務になっている取引や特定の項目を記載しなければならない取引もあります。関連法令や判例なども確認するようにしましょう。

業界によって関連法令が変わりますので、契約書のテンプレートを使えないことも多くありますので注意が必要です。

契約書作成の一般的な構成・流れ

契約書の形式は原則自由です。ただ実務上の運用でよく採用される下の構成に揃えておくと円滑に作成が進められるでしょう。

  1. 表題
  2. 前文
  3. 本文
  4. 後文
  5. 作成年月日と署名

表題

表題とは、その契約書のタイトルのようなものです。契約書の内容が一目で分かるようにすることがポイントです。法律上のルールをよく理解した上で判断しましょう。

表題の例としては以下のようなものがあげられます。

  • 売買契約書
  • 賃貸借契約書
  • 雇用契約書
  • 請負契約書

前文

前文は、当事者を表示する箇所にあたります。

「甲」「乙」という略称を使用し下に続く本文で当事者を表しますので、「株式会社○○(以下、甲という)」などのように表記し、甲が株式会社○○、乙が株式会社○○とわかるように記載しておきます。

本文

本文は、契約内容を具体的に示すもっともボリュームある箇所にあたります。大きく「一般条項」「主要条項」の2つに分けられます。

一般条項

「一般条項」とは多くの契約で共通する項目を意味します。契約期間や支払条件、契約解除に関する項目は契約の内容に関わらずほとんどの場合に記載される項目のため一般条項と言えます。

主要条項

「主要条項」はこれに対し今まさに締結しようとしている契約の内容に沿った項目を言います。売買契約であればその商品の値段などがこれにあたります。

本文において重要なことは、目的物や業務内容、対価の設定、支払いの方法等をはっきりとさせておくことです。
目的物については抽象的にどの商品を引き渡すと定めるだけでは不十分で、具体的にどのような状態で引き渡すのか明確にしておきます。委任契約や請負契約では仕事の内容を明確にすること、対価も現金なのか振り込みなのか、振込手数料の負担はどちらなのか、はっきりさせるようにします。

後文

後文では、契約書を何通作成したのか、それを誰が所有しておくのか記載します。
一般的には、当事者数分契約書を作成し、それぞれが持つことになります。

作成年月日と署名

最後に日付欄と署名欄を設けます。日付はただの記録ではなく、契約の効力発生に関わってくる非常に重要なものです。
署名欄については基本的に自社と相手方の2つ、連帯保証人などがいる場合には3つ設けることになります。署名の信用性を高めるためにも押印を併せてしておきます。

ただ、会社として契約する場合には署名欄に商号や役職の記載を忘れないように注意しなければなりません。
個人名だけを署名してしまうと、相手方と自分個人での契約とみなされてしまい、大きなリスクをかかえることになってしまいます。

本文に記載を検討すべき条項

目的

本文の第1条に置かれることが多いのが目的条項です。なくてもほとんどの場合問題ありませんが、複雑なトラブルが生じたとき、契約書の解釈に言及することがありますので目的条項でその方針を明確にしておくと役立つこともあります。

定義

専門用語など、言葉の範囲が曖昧なキーワードが出てくる場合にはできるだけその意味を示すようにします。
この定義条項は第三者でも分かるようにするのが基本です。

支払条件

対価を支払うよう定める場合、それをいつ履行するのか、その場所および方法についても定めます。
特に、弁済の場所が債務者の住所(取立債務)なのか債権者の場所(持参債務)なのか、注視する必要があります。

期限の利益喪失について

期限の利益とは、設定した期日までは支払いが猶予されることの利益を言います。この利益が喪失する場合を条項として定めたほうが良いケースがあるのです。

たとえば、金銭の支払に関する契約を結んでも、債務者となる会社の経営状況が悪化すると支払いが受けられなくなる可能性が出てきます。悪化する前兆があるなら、支払期日を待たずに、つまり期限の利益を喪失させて請求したいと思うでしょう。

分割払いにおいて遅滞が生じたときには全額について期限の利益を失い直ちに全額請求ができる、と定める例が挙げられます。

契約期間

継続的な契約の場合には契約期間の条項が重要になってきます。
賃貸借契約やフランチャイズ契約などは長期に渡る契約の例です。期間を明確にするとともに、必要に応じて更新についても記載しておきます。

契約解除事由

契約が解除できるケースを定めておくことで不安定な状況を迅速に解消することができるようになります。

取引上不備が生じたとき、契約は今も続いているのか、請求を受けることになるのか、履行をしなければならないのか、どっちつかずの状況に陥ることもあり得ます。

解除できるケースが法律上定められていることもありますが、この法定解除権だけではカバーしきれいない状況もありますので、解除できるケースを当事者間で設定することが重要となります。

損害賠償について

契約違反があった場合、自社が損害を受けることもあるでしょう。
このとき解除できるだけでなく、損害賠償に関する条項を設けておくことで現実に救済を受けやすくなります。

たとえば、支払いに対する遅延損害金を設定するなどです。
法定の金利より高く定めることで圧力を加える効果が期待でき、任意の弁済を促せます。

裁判管轄

当事者間に距離がある場合、訴訟に備えどの裁判所で裁判を行うのかあらかじめ決めておきます。
「○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」といった形で指定します。ここでは「専属的」という語句を必ず入れなければなりません。

反社会的勢力の排除

相手方が反社会的勢力ではないこと、この契約において暴力や脅迫を用いる行為をしないこと等を約束させ、これに反した場合の解除・損害賠償についても記載します。
最近はほとんどの企業が契約書作成の際には必ずこの条項を入れるようにしています。

秘密保持義務

自社の企業情報を相手方に渡すこともあります。これを第三者に漏らさないよう、開示を禁止することの規定を設けます。
違反時には賠償請求ができるようにし、被害拡大を防ぐため差止請求についても定めておきます。

個人情報の取扱い

企業秘密のほか、履行に際し個人情報を扱うことも多いです。
特に近年は個人情報の取扱いについて厳しくなってきているため、十分に配慮することが必要です。

第三者提供に関することや、特にEU加盟国、EEA加盟国に所在する者の個人情報はGDPRの保護対象となっており、多額の損害賠償を受けることにもなりかねませんので、慎重に取り決めを行います。

担保保証

支払を確実にするためには保証人をつけること、不動産に担保権を設定することが効果的です。
高額な金銭のやり取りがあるなら、○○土地に抵当権を設定する義務を負う、などと定めておくと良いでしょう。

契約書作成はどちらが行う?作成者のルール

当事者のどちらが契約書作成をしなければならないのか、法律上決まってはいません。
ただし相手方に丸投げして任せるのはとても危険です。どこかの条項に相手が有利になるような記載をされている可能性もあります。

そのため重要な取り決めについては話し合いながら決めるようにし、相手方が作成した文章には全て目を通し、不利になるような文言が盛り込まれていないか厳重にチェックしなければなりません。

信頼できる取引先が相手でも契約書内容のチェックはしっかりと

これは信頼できる取引先であっても同様です。相手方が意図していないままに、不利益を与えるような記載や法令違反を含む記載を可能性もあります。後でトラブルになった際にはそのことを利用される可能性もあります。

また、自社の商品やサービスについて、よく使うことになるのであれば自社にてひな形を準備しておくとスムーズに取引が進められるようになります。
ただしこの場合でも常に更新をするように気を付け、リスク要因が後から生じた場合には契約書の内容に盛り込むようにし、ひな形の質を高めるようにしましょう。

契約書をテンプレート・ひな形ベースで作成するのはあり?

契約書の作成にあたってネットで「売買契約書 ひな形」などと調べると、契約書のテンプレート・ひな形は簡単に見つかります。テンプレート等には、すでにいくつかの条項が盛り込まれており、これを元に契約書を作成すれば手間もかけずに済むでしょう。

テンプレートでは実際の契約内容をカバーできない可能性が高い

しかし、基本的にはテンプレート等を使って穴埋め的に契約書を作成するのは危険であるため、避けるべきです。実際に結ぶ契約の内容に沿っているとは限らず、トラブルに対処できない可能性が高くなってしまいます。

他にも、守ることのできない条項を記載したままにして相手方から契約違反であると言われることや、保証の範囲などを具体的に記載していないために代金を請求できないことなど、種々の問題点が挙げられます。

テンプレートやひな型は「チェックリスト」として使うのが効果的

負担なく正確な契約書を作成するなら弁護士に相談するのがベスト

ただし、テンプレート等も有効活用することはできます。
たとえば、自社で作成した契約書と比較することで基本的な条項が抜けていないかチェックする役割としての利用です。
その場合には条項の補充を検討し、契約の内容に合致する場合にはこれを記載するようにします。

テンプレートやひな形はあくまでチェックリストとしての用途に留め、出来るだけ正確に、そして負担をかけずに契約書を作成するためには弁護士の力を借りるという方法がベストです。

契約書作成の注意点~契約トラブルを防ぐために

主語の記載

主語が抜けてしまうと、権利や義務が誰について記載しているのか明確にできず、トラブルの元になってしまいます。
基礎的なことですが、この点しっかりと抑えて作成するようにしましょう。

また、主語の後は必ず読点を打つようにしましょう。

公序良俗違反

公序良俗に反する内容は、当事者間で約束をしたものでも無効になります。
お互いがいいと考えていても、後にその内容につきトラブルが生じた際には有効に成立したことの主張ができませんので、道徳的観念から考えて妥当とは言えないようなことは定めないようにしましょう。

強行法規との抵触

金銭の貸し借りにおいては利息制限法が置かれていることによって、金利に上限が設けられています。法定の金利を超える設定をした場合、公序良俗違反のようにすべてが無効になるわけではありませんが、これを超える利息については無効となります。

このように、強行法規と抵触する場合、その制限内でしか効果が生じません。そのため関連する法令についてはしっかりと事前に調べておく必要があります。

改ざんの防止

正しい方法で契約書が作成できたとしても、改ざんをされてしまう可能性がありますので、できるだけ改ざんされないような工夫をすることも大切です。

よくある対処法としては、「一」「二」「三」と表記するのではなく、それぞれ「壱」「弐」「参」とすることなどが挙げられます。

また訂正をする際には訂正した文字数を付け加えることが多いですが、「〇文字削除」とするのではなく「削除〇文字」とするようにするべきです。
手前に数字を付けたすことによる改ざんが防ぎやすくなります。訂正印についても、欄外に押すのではなく、訂正箇所に押すようにしましょう。

契約書作成は弁護士に相談を

契約書の作成をするだけであればひな形を利用するなどして完成させることはできますが、作成の目的はトラブルを防止することにあります。
そのためには法律の知識や、トラブルが生じた際の適切な対処法も知っておくことが重要です。弁護士はこの道のプロであるため、依頼をすれば、安心で確実な契約書を作ってくれるでしょう。
特に重要な契約の際にはリスクも想定し、事前に弁護士に相談することを検討すると良いでしょう。

契約書作成・チェックは顧問弁護士ならよりスムーズ

また、契約書作成や契約書のチェックは多く発生することが見込まれますし、契約書の作成は自社の状況なども分かっている弁護士に相談することが望ましいです。
そのため、顧問弁護士がまだいない場合には契約書作成の機会に顧問弁護士を探してみることをおすすめします。また、顧問弁護士を探す際には、企業法務を専門としている弁護士を選ぶようにしましょう。

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