未払い残業代請求でトラブルになるケースとは?弁護士に相談してチェックしておこう

未払い残業代

労働問題のなかでも増加する未払い残業代を巡るトラブル

円満退社したはずの元社員から未払い残業代請求されるケースも

厚生労働省が発表した最新の「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、労働基準監督署などで行われた平成27年度の総合労働相談件数は約103万件。これはセクハラやパワハラ、不当解雇や雇い止めといったあらゆる内容の相談を含む件数ですが、単純に計算しても1日に約3000人に近い数の人々が、日本のどこかで労使トラブルに関する相談を行っていることになります。

未払い残業代は弁護士にも依頼しやすいトラブル

なかでも未払いの残業代を巡る問題は、実は労働者の側にとっては訴えが起こしやすく、弁護士にも依頼しやすいトラブルです。たとえば当該社員が退職時には何も言わなかったとしても、法的に正しく残業代が支払われていないことが何らかの形で証明されれば、会社は未払い分の残業代の支払いを免れることはできません。

さらに訴訟になれば、未払いの残業代に加えて遅延損害金や、最大で未払い残業代と同額の付加金までが使用者側である企業に課されてしまうケースもあります。「会社で働く従業員や退職した元従業員から、未払い残業代を払うように訴えられてしまった…」。ある日突然に起こり得るこうしたトラブルで大切な会社が大きなダメージを受けないためにも、日頃からきちんと対策を立てておきましょう。

未払い残業代トラブルに多い原因とは? ①違法な雇用契約

すべての会社にある「残業代を支払う」法的義務

未払い残業代を巡るトラブルの原因となるひとつが、経営者の法律に対する理解不足です。たとえば、労働条件通知書や雇用契約書などに「残業代が出ないことを明記している」ことを理由に残業代を支払わなかった場合、そもそもの雇用契約自体が違法なためその内容は無効となります。

民法には当事者間で合意されても必ず守らなければならない強行法規と、当事者間の合意によって定められる任意法規があり、「残業代の支払い義務」は前者の強行法規にあたります。先ほどの例では、経営者が定めた「残業代は出ない」という会社のルールは任意法規であり、「使用者は労働者に残業代を支払う義務がある」という強行法規の方が優先されるため、たとえ労働条件通知書などに明記していたとしても、請求されれば未払い分の残業代を支払わなければなりません。

年棒制の場合は、含まれる残業代の明記が必要!

強行法規と任意法規の問題で言えば、「年棒制だから残業代は支払わない」などといったルールも、民放の原則に照らせば無効となります。年棒制であれば、たとえば「月に20時間の残業代を給与に含む」といった内容を就業規則などに明記しておくこと。もちろんそのうえで、規定を超えた残業時間に対する残業代は、きちんと支払うことが大切です。

未払い残業代トラブルに多い原因とは? ②名ばかり管理職

管理職と認められるために必要な4つの条件

また、「管理職だから残業代を支払わない」といったケースも注意が必要です。管理職とは正式には管理監督者を意味し、確かに労働基準法には、「管理監督者には割増し賃金の支払は適応外」と明記されています。とはいえ、これが実際には他の従業員と変わらない「名ばかり管理職」であれば、残業代を支払わなかったことが違法と見なされ、未払い残業代の請求を受ける可能性があります。

法律で管理職と認められるには、

  1. 部署を管理・監督する立場にある
  2. 企業の経営に関与している
  3. 業務量や労働時間を自分の裁量でコントロールできる
  4. 他の従業員に比べて十分な賃金を得ている

といった4つの条件を満たしている必要があります。こうしたすべての条件が揃っていないにも関わらず残業代の支給を受けていない「名ばかり管理職」の人から訴えを起こされれば、会社は間違いなく多額の未払い残業代を支払う必要に迫られてしまいます。

未払い残業代トラブルに多い原因とは? ③ずさんな労務管理

タイムカード以外の証拠でも残業は証明できる

現場における杜撰な労務管理を経営者が認識していなかったり、あるいは見て見ぬフリをしていたり。会社が日頃から適切な労務管理を行えていないことも、当然ながら残業代を巡るトラブルの原因となります。

たとえば、「残業をするな」と口うるさく言う会社側に対し、労働者が定時にタイムカードを押して残業を続ける。あるいは、就業時間内に終わらない仕事を自宅に持ち帰るといったいわゆる「サービス残業」についても、会社は残業代を支払う義務を負います。

こうしたケースでは、残業時間中にやり取りしていた業務上のメールや、日報などの上司への報告書が証拠として認められ、実際に会社が多額の未払い残業代の支払いを命じられることも少なくありません。

未払い残業代トラブルでダメージを受けないために

トラブル予防には弁護士によるチェックが有効!

未払いの残業代は過去2年に遡って請求することができるため、その額は数百万円にもなることが珍しくありません。そうした経済的なダメージに加え、訴訟になれば弁護士に依頼する費用はもちろん、本来なら会社を成長させるために費やすはずの時間や労力も失われてしまいます。

とはいえ、残業代を巡るトラブルの火種は、多くの会社で見過ごされているのが実情です。トラブルを予防するためには、法律に則った正しいルールを整備し、きちんと現場で運用することが何よりも大切。自社で行っている労務管理の体制に不安がある方は、ぜひこの機会に企業法務に強い弁護士などに相談し、プロの目によるチェックを受けてみてはいかがでしょうか。

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