発明を独占的に使用できる特許権とは?〜経営者が知っておきたい知的財産権

発明

発明=特許権の保持、ではないことに注意

特許権とはどんなもの?

特許権を簡単に説明するなら、あなたの発明した技術や製品を保護する権利です。この説明だけならとてもシンプルで、なんとなくわかった気にもなりますが、実はさまざまな細かい規定を持つ、複雑な権利でもあります。そこで、ここでは特許権についてもう少し詳しく説明していきましょう。

特許を得るには「高度な」発明が必要

特許法第2条では、「発明」とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものであると定義され、それらを独占的かつ排他的(他者の使用を許さない)に利用する権利が特許権となります。この権利を得ると、出願日から20年間は、原則としてその利用を独占的に行うことができます(特許法第67条)。

「発明」ではない「発見」は保護の対象外

「発明」とは何かについて付け加えておきましょう。特許法で保護を受ける発明とは具体的に、

  1. 自然法則を利用している(後述)
  2. 技術的な思想である
  3. 発明者の創作である
  4. 日常的に誰でも容易に再現できるものではなく、高度である

以上の4項目を満たしている創作のことです。

発明の要件のうち①にある「自然法則」とは、人為的な法則ではないことを意味します。たとえば、資産運用のアイディアは「人工的な経済の法則=人が定めたルール」にもとづくため、特許権が保護する対象外となります。また、「技術的な思想であること」が必要なため、たとえば、アインシュタインの相対性理論やニュートンの万有引力の法則といった自然法則そのものの「発見」は、特許権などでは保護を受けられないということになります。

特許権はどのように権利を保護しているか

直接的かつ具体的な効力は「利用差し止め」と損害賠償請求

では特許権は、法的に見るとどのような方法で権利者を守っているのでしょうか? 特許権の効力をわかりやすく言うと、特許権利者以外がその発明を利用することを許さない、勝手に使ってはいけないということになります

権利を行使する具体的な方法としては、あなたの発明を勝手に利用している他者に対し、利用差し止めや損害賠償請求をすることが挙げられます。著作権などにも共通しますが、権利者以外の知的財産の勝手な利用を防ぐということが、すべての知的財産権の持つ基本的な効力となります。

“開発→特許の取得”の流れを意識しよう

特許権について注意すべき点に、開発、発明を行った時点で、すぐに開発者の独占的な権利に繋がるわけではないということがあります。新技術や新商品を独占的・排他的に利用するためには、特許法で規定されている要件を満たし、特許庁の審査を通過する必要があるのです。

また、発明の時期にかかわらず、先に特許を願い出て権利を取得した人が権利者となるのも特許権の特徴です。これは「先願主義」と呼ばれ、つまり、Aさんがたとえ10年先に同じ発明をしたとしても、特許を取得していなければ後から出願したBさんが権利者となってしまいます。

出願から登録までのおおまかな流れを知っておこう

出願中でも発明の製品化や販売はOK

それでは下記の図で、特許権を取得するまでの手続きの流れを見ていきましょう。

特許取得の流れ

まず、特許の出願人は「特許願」を特許庁に提出し、特許庁ではその書類が正しく不備がないかを審査する「方式審査」が行われます。その後、特許申請された新たな発明は、1年6ヶ月の期間を経て世の中に広く公開されます。この「出願公開」までは出願された発明が秘密の状態に置かれ、いわば発明者はその技術を使った製品化や販売を独占的に行うことができます

たとえば、世の中で「特許出願中」というキャッチコピーで販売されている製品などは、まだ出願公開される前の発明が使われていると考えることができるのです。

出願から3年以内? 出願審査請求のタイムリミットに注意!

日本での特許申請で注意すべき点は、出願日から3年以内に「出願審査請求」を出願人の側が行わなければ、申請が取り下げられたとみなされることです。また、当然ながら申請すれば必ず認められるわけではなく、さまざまな理由で登録が拒絶されることも少なくありません。そうした場合は、特許庁からなぜ特許として認められないかが記載された「拒絶理由通知書」が通知され、出願人は書面などを通じて反論することができます

すべての発明に特許権が認められるわけではない

要件を満たしているか、事前にチェックを!

ここまで、発明とは何か、そしてその発明が特許として認められ、登録されるまでの流れを見てきました。ただし、申請はしたものの特許としては認められず、拒絶査定(登録の拒否)を受ける場合もあります。それでは、どういった発明に特許が認められやすいのでしょうか?

特許を取得するために必要な要件として、

  1. 産業に利用可能
  2. 新規の発明である
  3. 進歩性がある
  4. 先願(先に申請、登録している他者がいない)である
  5. 公序良俗に反しない
  6. 書類提出、明細書の記載が定められたルールに則っている

以上があげられます。

寝る間も惜しんで開発をした、どうも先に登録されている案件もなさそうだ。さあいよいよ特許の取得だ!と意気込んだはいいものの、書類の不備によって結果は登録NG…。そんなことが無いようにも、まずは登録に必要な要件を満たしているか、そもそも発明として成り立っているのかといった点を、できれば専門家と相談してみましょう。

知的財産権の扱いに慣れた弁護士などに力を借りれば、特許の申請はもちろん、製品開発のヒントを与えてもらえるかもしれません。

手順は複雑、審査も厳しい。それでも特許権はあなたを守るパートナーです!

特許権については、発明の要件も、登録の条件や手続きも、しっかりと権利を守るために少々複雑かつ手順が多いものになっています。とはいえ、審査で落とすことが目的ではなく、優れた発明を保護することで産業の発展を促すことが特許権の本来目指すところです。

事前の準備と確認を怠らず、専門家と一緒に対策をすれば、強い特許がきっとあなたの会社の心強い味方になってくれるはずです!

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