よく耳にする著作権とは?~経営者が知っておきたい知的財産権

書籍

創作者以外にも幅広い立場を保護する権利

著作権は登録の必要がなく、創作と同時に自然発生する

著作権法のなかで、「思想または感情を創作的に表現したものであり、文学・学術・美術または音楽の範囲に属するもの(著作権法第2条1項1号における「著作物」)」に対して発生する知的財産権とされるのが「著作権」です。この著作物を製作した者を著作者と呼び、著作権を行使する権利が与えられます。

知的財産権は、特許などのように発明するだけでは認められず、登録することによってはじめて権利が発生するものと、創作すると同時に発生するものとに大きく分かれます。著作権は後者に位置づけられ、日本では著作者の死後50年までこの権利が保護されます。また、著作権に対する理解と保護の度合いは、著作物を生み出す創作活動そのものへの敬意を含んでいるため、その国の文化的な高さを測るとも言われます。

財産的な価値だけではなく、著作者の尊厳も守る

著作者の権利は、財産的な面での利益を保護する「著作権(財産権)」と、人格的な面での利益を保護する「著作者人格権」との二つに分かれます。前者は著作物を著作者以外の他者に無断で利用させないことで、財産的な価値を保護するためのもの。後者は著作物について、その著作者の意図するところではない改変を認めず、著作物を通して表現された著作者の人格を保護する意味合いがあります。

また、著作権には、音楽を演奏する実演家、レコード製作者、放送事業者などの間接的に創作にかかわった立場の人を保護する「著作隣接権」があり、著作者以外の権利も保護の範囲とされていることも、大きな特色の一つとなっています。

私たちの身の回りにある著作物とは?

著作権は、著作物についてのクオリティを問いません!

一般的に著作物には「思想または感情を創作的に表現したもの(以下略)」といった定義があり、そうした模倣ではない、独自に創作した作品を広くカバーするのが著作権という権利です。つまり、職業としての画家が描いた絵も、幼い子供が描いた落書きも、同じように著作物として扱われます。私たちの身の回りにもたくさんの著作物がありますが、具体的には以下のような種類に分けることができます。

著作物の種類

①言語の著作物

論文、小説、脚本、または講演など言葉によって表現されたもの全般。

②音楽の著作物

楽曲だけでなく、同時に使用される歌詞も含む。

③舞踊、無言劇の著作物

身振りや動作によって表現される著作物。日本舞踊、バレエ、ダンスなどの振り付け。

④絵画、版画、彫刻そのほかの著作物

形や色で表現される著作物。マンガ、書、舞台装置、また、美術工芸品も含む。

⑤建築の著作物

芸術的な建造物(設計図は図形の著作物)。一般家屋などは除外。

⑥地図、図形の著作物

学術的な図面、図表、模型または設計図や地球儀などもその範囲。

⑦映画の著作物

映画フィルムやCDなどに記録されている劇場用映画・アニメなどの動画。ゲームソフトも含む。

⑧写真の著作物

写真、グラビアなど

⑨プログラムの著作物

コンピュータ・プログラム

権利侵害のわかりにくい二次的著作物とは?

翻訳された小説やアレンジされた音楽なども著作権の対象

他にも、著作物には少し成り立ち方が複雑なものがあり、その代表的な例が「二次的著作物」です。二次的著作物は、上の表にあるような著作物(原著作物)を「もと」に創作された著作物のことで、その著作権はもとの著作物(原著作物)とは別に保護されます。たとえば、海外作品の日本語翻訳版、小説やマンガの映画化、楽曲をアレンジし直したものなどが二次的著作物にあたります。

二次的著作物を創作する際には、原著作物の著作者の許可が必要です。また、二次的著作物を利用する場合、たとえば外国の小説の翻訳を出版しようとするときなどは、二次的著作物の著作者となる翻訳者の許可以外にも、原著作物の著作者の許可を得る必要があります。

著作物を勝手に再編集して利用するのは違法行為!

ところで、動画配信サービスなどでよく目にするものに、もとの著作者以外の手による映像などの二次的著作物があります。なかには何万回もの再生数を誇る人気の作者も。これは、原著作物を再編集したり、新たな効果を加えたりしたものですが、著作者に許可を得ないまま原著作物が使用されているケースもよく見られます。では、この行為は合法なのでしょうか? 答えは違法です。著作権法的には完全にアウトなのですが、著作者によっては黙認されている状態です。

ただし黙認されているからといって、それは決して許可を得ているわけではありません。繰り返しになりますが、法的には完全な違法行為です。こうしたケースではたびたび訴訟も起きていますので、個人であり法人であれ、著作物の二次利用には日頃から注意しておくことが重要です。

百科事典やデータベースは保護対象。対して、憲法や法令は?

検索可能なデータベースなども著作物として保護される

また著作権法では、百科事典や新聞・雑誌のように、複数の項目が掲載されている本などの場合、それぞれの項目に記載される内容とは別に、本そのものも「編集著作物」として扱います。つまり、その本にどういう項目をどのような順に載せるかなどについては、編集者の創作として権利が認められているわけです。また、編集著作物のうち、その内容をコンピュータによって検索できるものは「データベースの著作物」として保護されます。

著作物であっても著作権が適用されないものもある?

そうした著作権が認められるさまざまな著作物に対して、以下のようなものは、著作物ではあるものの著作権の保護範囲外とされています。

著作権で保護されない著作物

  • 憲法そのほかの法令(地方公共団体の条例、規則も含む)
  • 国や地方公共団体又は独立行政法人の告示、訓令、通達など
  • 裁判所の判決、決定、命令など
  • 上にあげた著作物の翻訳や編集物で国や地方公共団体又は独立行政法人の作成するもの

これらはどれも文書として世に出るものですからある意味では著作物とも言えそうですが、場合によっては著作者の存在を明らかにすることが難しく、公共の財産としての役割を持つため、著作権による保護は適応されません。ですから、たとえば日本国憲法や裁判の判例などをそのまま引用して出版したとしても、法律的には何ら問題がないというわけです。

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