親事業者(委託事業者)の4つの義務と11の禁止行為

親事業者

親事業者が守らなくてはならない義務と禁止行為とは

他の会社や個人に仕事を発注する際、自社が下請法の適用となる親事業者に該当する場合は、事業者が守らなくてはならない義務と禁止行為が定められています。ここでは、4つの義務と11の禁止行為について説明します。

※2026年1月1日から、下請法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称「取適法」)に改正され、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「下請代金」は「製造委託等代金」へと用語も変更されました。義務が4つ、禁止行為が11という数は変わりませんが、禁止行為のうち「割引困難な手形の交付」に代わって「協議に応じない一方的な代金決定」が加わり、手形による支払いそのものが禁止されるなど、内容が見直されています。以下は改正後の内容に沿って説明します。

親事業者が守らなくてはならない4つの義務

1.発注内容等の明示義務(旧・書面の交付義務)

口頭での取引は、さまざまなトラブルの原因になります。これを防ぐため、委託事業者は、発注に際して、発注内容や代金、支払期日などの必要事項を、書面または電子メールなどの電磁的方法により、直ちに中小受託事業者に明示しなければなりません。2026年1月施行の取適法では、電磁的方法による明示について、中小受託事業者の事前承諾が不要となりました。ただし、中小受託事業者から書面の交付を求められた場合には、法令上の例外に該当する場合を除き、書面を交付する必要があります。発注後、直ちに明示しないと、罰金を科せられることがあります。

明示しなければならない内容は、法律(公正取引委員会規則)で決められています。該当する項目は、あらかじめすべて決定しておいてください。

発注時に明示が必要な事項

a 親事業者と下請事業者の名称
b 委託をした日
c 下請事業者の給付内容(品名・規格など)
d 下請事業者の給付を受領する期日(納期)
e 下請事業者の給付を受領する場所(納入場所)
f 親事業者が給付の内容を検査する場合は、検査を完了する期日
g 下請代金の額(算定方法による記載も可)
h 下請代金の支払期日
i 一括決算方式で支払う場合は、金融機関名、貸付けまたは支払可能額など
j 電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額と満期日
k 原材料などを有償支給する場合は、品名、数量、対価、引き渡しの期日、決済期日と決済方法

明示の書式は決められていませんので、取引内容に応じた発注書面や電子メールなどで明示しましょう!

2.支払期日を定める義務

急な支払日の変更や遅延は、下請事業者の経営悪化を招きます。親事業者は、下請事業者と合意した上で、支払の期日を定めなければなりません。また、発注した物品を受領した日から60日以内で、できるだけ短い期間にしなくてはなりません。

3.取引記録の書類作成や保存の義務

親事業者の違反行為に対して注意を促すため、また公正取引委員会や中小企業庁による調査や検査に役立てるため、取引記録の書類を作成し、保存しておかなければなりません。

給付内容や、下請代金の金額など取引に関する記録を書類にし、2年間保存することが義務付けられています。

4.遅延利息の支払義務

親事業者が、支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、親事業者は下請事業者に対して、遅延利息を支払わなければなりません。

遅延利息は、受領日から60日が経過した日から加算されます。この日から実際に支払が行われるまで、年14.6%の遅延利息が発生します。取適法では、代金を不当に減額した場合も、減額した分について遅延利息を支払わなければならないこととされました。

親事業者に禁止されている11の行為

1.受領拒否

下請事業者に責任がないのに、注文した物品などの受領を拒むこと。

〈例〉小売店が在庫の余剰を理由にメーカーに発注した商品の一部をキャンセルする。

2.下請代金の支払遅延

下請代金を受領日から60日以内のあらかじめ定めた期日までに支払わないこと。

〈例〉納入した物品の検査がまだ終わっていないからと言って、受領日から60日を過ぎても支払を行わない。

取適法では、手形の交付や、支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難な電子記録債権・一括決済方式(ファクタリング等)による支払いも、支払遅延として禁止されます。

3.下請代金の減額

下請事業者に責任がないのに、注文した時に決めた下請代金を減額すること。

〈例〉顧客サポートを依頼したが、サポートの要請が少なかったからと言って下請代金を減額する。

振込手数料を中小受託事業者に負担させて代金から差し引くことも、減額に当たり禁止されます。

4.不当な返品

支払い事業者に責任がないのに、受け取った物品を返品すること。

〈例〉工業デザインが変更になったからといって、不要になった部品を返品する。

5.買いたたき

類似品の市場価格に比べ、著しく低い下請代金を定めること。

〈例〉大量に発注した時の単価と同じ単価で、ごく少量の発注に対応するよう要求する。

6.物品の購入やサービス利用の強制

親事業者が指定する物品を無理やり購入させたり、必要のないサービスに加入させたりすること。

〈例〉仕事を発注する代わりに、自社が決めた損害保険に加入させる。

7.報復措置

親事業者の不正行為を公正取引委員会や中小企業庁(取適法では事業所管省庁も含む)に知らせたことを理由に不利益な扱いをすること。

〈例〉「言いつけられて大変だった」などと言って、今後の取引を停止する。

8.有償原材料などの対価の早期決済

親事業者が有償支給した原材料の代金を、下請代金の支払日より早く支払わせること。

〈例〉原材料を3ヵ月分まとめて買い取らせ、下請事業者が納品する前に支払を要求する。

9.協議に応じない一方的な代金決定

中小受託事業者から代金に関する協議を求められたのに協議に応じなかったり、必要な説明や情報提供をしないまま、一方的に代金を決定したりすること(2026年1月施行の取適法で新設)。

〈例〉原材料費や人件費の上昇を理由に価格の見直しを求められたのに、協議の場を設けず従来の単価のまま発注を続ける。

なお、旧下請法の「割引困難な手形の交付」の禁止は、取適法で手形による支払いそのものが禁止された(2.支払遅延に該当)ため、独立した禁止行為ではなくなりました。

10.不当な経済上の利益提供の要請

下請事業者に金銭やサービスを不当に提供させること。

〈例〉各種協賛金の提供を強制したり、従業員を無償で派遣するよう要求したりする。

11.不当な給付内容の変更、やり直し

下請事業者の負担で、注文の取消や内容の変更を行ったり、受領した後にやり直しや追加作業をさせたりすること。

〈例〉会社の方針が変わったからといって、費用を負担せずにデザインをやり直しさせる。

違反行為によって企業の信頼がゆらぐことも

違反企業の社名や違反内容は世間に知られてしまう?

違反行為が認められれば、公正取引委員会や中小企業庁から勧告や指導を受けることになります。また、公正取引委員会から社名や違反内容も公表されますので、企業イメージの悪化や企業の信頼損失につながることも…。自社が親事業者に該当する場合は、これらの禁止行為をしっかり確認しておきましょう。

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